あの日も朝からよく晴れていた
仕事が休みの日だというのに、あなたは今朝もいつものように、5時前には起きていたのだろう。
そして、これまたいつものように、寝起きに煙草を一服したら、おもむろに珈琲を淹れて、それを飲みながら新聞を読んだのだろう。
わたしはといえば、普段は遅くとも6時には起きるのだが、昨夜は編み物につい夢中になって遅くまで起きていたので、8時をまわってからようやく目が覚めた。
わたしが寝室から出る気配を感じると、あなたは「あっ、やっと起きた〜?」と笑顔で居間から出て来た。
そして、わたしが洗面所にいる間に、わたしのために珈琲を淹れてくれた。
いつもながらあなたは本当に優しい。
わたしが珈琲を飲んでいると、その横であなたは、今日は食材の買い出しのついでに、二人のお気に入りのカフェにも寄ろうとか、楽しそうに今日の予定をたてる。
代わり映えのない、いつもの休日が始まろうとしていた。
お天気がいいので洗濯をしてから出掛けようと、洗濯機を回そうとしていた時、わたしを呼ぶあなたの声が聞こえた。
なんだかただならぬ様子に急いで居間に戻ると、ソファーに座ったあなたが「脚に力が入らなくなってきた。」と言う。
「暑く感じたのでエアコンの温度を下げたから冷えたのかな?」とあなたは言ったが、わたしにはそれ程室内が冷えているようには感じなかった。
取り敢えずブランケットを掛けてあなたの脚をさすった。
が、間髪を入れず、あなたが「やっぱり救急車を呼んで!」と言い出した。
我慢強いあなたが叫ぶように言ったことで、ただ事ではない何かが起こっているのだと思った。
119番通報をしようと立ち上がって家電に向かって歩き出したわたしの背中に向かって、あなたは「行かないで!ここに居て!」と言う。
こんなあなたを初めて見た。
わたしは激しく動揺しながら、手元のスマホから救急要請をした。